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読む力・高学年の場合

2006.09.17(Sun)



学習言語を読む力について考えてみます。


まず、「学習言語」とは何でしょうか?これは「文脈の支えが少なく認知的な負担が大きい場面で発動される」言語です。授業中に求められるような抽象的な思考活動をに必要なものです。文字を媒介に新しい知識を仕入れたり、内容を整理・分析したりといった活動に要求される能力です。「生活言語」から「学習言語」に至るには、とても時間がかかると言われています。

また、母語での「学習言語」が確立されているかどうかも、重要な決め手となります。「学習言語」領域は母語(第一言語)と第二言語の間で相互作用を及ぼすと言われているからです。


日本語で学年相当の内容を学習するためには、日本語での読み書き能力、日本語の語彙と知識が必要です。

読みの力は五・六年生程度の授業についていく力があれば、基礎は完成しています。国語の教科書をご覧になるとわかると思いますが、小学校三・四年までは「話し言葉」中心の学習です。五・六年になると日常生活では使わない言葉が多くなり「書かれた日本語」を読むことが要求されるようになります。中学に入るとさらに内容のレベルが上がっていきます。学習内容も日常生活からかけ離れた内容になってきます。「書かれた日本語」を通しての学習が必要です。漢字も増えてきた日本語の文章が難しくなってくるのが高学年なのです。


ここでは、「読み聞かせ」とは別に、学習言語としての「読む力」を伸ばすためのアイデアをまとめてみました。


1.家庭の中に読書の環境を

これは「読み聞かせ」とも重なりますが、大切な事なので。読書環境とは、家族全員が読書をする時間を持つこと、読み聞かせ、本にまつわる会話などがその例として考えられます。楽しみながら読める本を探して、お父さんお母さんも一緒に読んであげることで、日本語を使った楽しみが、又一つ増えるのです。そして、読書力は全ての学習の基礎になるものです。ですから、日本語力の向上のために英語での読書も大切であることも認識してください。

身近な「日本語読み物」としての教科書の熟読も効果的です。繰り返し読むことを嫌がる子どももいますが、全文を暗記できるくらい読み込むことができれば、達成感はもちろんのこと、日本語の持つリズム感がつかめるようになります。ただし、これは三年生くらいまでの教科書に限って言える事のようです。


2.現実に即した文章を読む

物語だけではなく、新聞記事、評論文などの現実に即した文章に接する事も大切です。こうした説明的文章に触れることは、自分の考えを理論的に説明する力も養います。文章で表現する力もつきます。

普段の生活の中で使われる表現の多くは、文学的な表現や詩的な表現よりも、いつ、どこで、だれが、なにをした、というような理論的な表現です。ですから、こうした種類の文章に触れることも大切なのだと思います。


3.多読

とっかえひっかえ、手当たり次第に本を読む子どもについて、斜め読みで内容が頭に入っていないんじゃないかしら?と心配の声をきくこともあります。けれど、様々なジャンルの本を手当たり次第に読むことで、自分の好みもはっきりしてきますし、何より大量の日本語・文字に触れることができます。

頭の中で英語に訳さなくても理解できるレベルのものは、思い切り大量に、流し読みでも構いません。これは、日本語の持つリズム感や感触に慣れるということが最大の目的です。

語彙量や定型文句を増やしていくためには、自分の日本語レベルよりも少し高めの作品を選び、内容を理解しながら読み進めていくことが必要です。その際には、言葉の意味を聞いたり、自分で辞書を使って調べたりという作業が必要になってきます。(ですから、小さい子供には面倒ですし、理解力が高まる12才前後からの取り組みでいいのではないかと思います。)このように、辞典や百科事典を使って丁寧に読むことは、読解力向上の鍵です。その読書が各教科の学習内容の理解向上にもつながりますので、高学年には是非試して欲しいと思っています。


4.母語で既習の内容を日本語で読む

これは、母語が日本語ではない場合を想定しています。たとえばニュージーランドの歴史や、オールブラックスの記事、あるいは英語で学習した日本のことなどを、日本語で読み返す方法です。既習の内容を日本語に置き換える作業をするのです。

未知の内容を学習する場合、概念形成、言葉の習得、語彙の蓄積をいっぺんにやることになります。これでは負担が大きいでしょう。日本語の意味がわかるだけでは、概念の理解が深まったとは言えないからです。

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